第二回 課題本その2 「「国境なき医師団」になろう!/いとうせいこう」

 

 

第二回目の課題本2冊目の話です。

 

2. 「「国境なき医師団」になろう!/ 著 いとう せいこう」

 

皆さんは、国境なき医師団について、どんなことをご存知でしょうか。

こちらの本は、男性向け日傘の販売収益を国境なき医師団に寄付したことから、国境なき医師団との関わりが始まったいとう せいこうさんが、国境なき医師団(以下 MSF)の紹介、メンバーへのインタビュー、いとうさんご自身の目で見た現地ルポの形式でMSFの活動を紹介してくださいます。

 

MSFは医療行為をただ行っているだけではありません。

彼らは医療行為の提供を通じ、自分たちの目で見た現地の様子や問題を、世界に対して伝える「証言活動」という行為を行っています。

この活動を第三者の意思を反映したものにならないよう、彼らは個人からの寄付だけで活動を行っているそうです。

そして、何よりも衝撃的だったのは、参加者の半数近くが、非医療従事者であるということです。命の危険と隣合わせな地域でも、彼らは医療行為を行っています。ノンメディカルスタッフのバックアップがあってこそ、それは実現できるのであることを、この本を読むことでしりました。

 

以下は、参加者の感想です。

 

海旧母

「皆さんも耳にしたことがある「国境なき医師団」(略してMSF)。その構成員のうち、ノンメディカル(非医療者)が48パーセントも占めるのはご存知だろうか。なんと約半数ものメンバーが医療に携わっていない。つまり医療部門の活動を、約半数のサポートチームが支えている。これがMSFの実態なのである。医師や看護師だけがNSFではないのだ。私は寡聞にも知らず、MSF=医療チーム中心の団体なのだとずっと勘違いしていた。(お恥ずかしい限りで・・・)
  ここで一口にノンメディカルと言っても様々な活動がある。浄水や電源の確保といったライフラインの整備。薬剤などの必要な物資の補給。現地での状況を世界中に発信し、国際社会の注目を引きつけることで解決の糸口をはかる証言活動。その他、メンバーの採用や配属をつかさどる人事に、購買も担当する経理もあるし、寄付金を扱ったりもする(それぞれ固有の名称があるが、それは本書を参照してね)。
  このように多方面にわたるサポート体制があって初めて、メンタル面も含めた様々な医療活動が可能となるのだ。このことは読書会にも同じことが言える。例えば、初参加者の方一人一人へのブリーフィング。受付係や席までの案内係。席に着いた後のサポート役。テーブルでのホスト役や会の進行役。必要な文具などを事前に揃えておく係。さらにどういう読書会になったかを発信していく係。こういったことは、裏方として支えてくれる人がいないと実現できないのである。まして、多様性を図る読書会を目指すのならば、なおさら手厚いサポート体制が求められることだろう。
  多様性を図りつつ、「一人が皆のために、皆が一人のために」を読書会として目指す。このためには、自然にそうなる雰囲気作りが重要だが、システムとして組み込むことも同じぐらい重要なことだ。このように考え、本書を課題本として選書した。奥池袋読書会の今後の選書についても、どういう読書会を目指していくのかという視点からのものがしばらく続く予定である。どうかご理解ください。最後に二つほど。いとうせいこうさんは本書を執筆することで、形を変えた証言活動をされたというのが一点。もう一つは、いわゆる人文書とビジネス書は、意外と近い関係かもしれないという感想を抱いたこと。この二点への言及で締めとしたい。

 

やっか

「どうも偽善的というか、こういう組織に対して良い印象を抱いておりました。

でも、自分たちの信念を貫いて行動し続ける人って、こんなにキラキラとしているものなのか!と、読了後はとてもポジティブになりました。ぜひなんらかの形で自分も関わってみたいです。」

 

読書会の証言活動に近いのが、この読書会の記録では、という話が上がりました。

今後、当読書会にご参加をご検討頂いている方が、どういう雰囲気で行っている会なのかを知ってもらえるよう、こちらの記録活動も頑張ってまいります。

 

 

第二回 課題本その1「読書会入門 人が本で交わる場所/山本多津也」

 

 

開催日: 2020年1月11日(土)

参加人数: 4名

課題本:

「読書会入門 人が本で交わる場所/ 著 山本 多津也」 

「「国境なき医師団」になろう!/ 著 いとう せいこう」

 

2020年になり、第二回開催となった奥池袋読書会。

今回は新しく2名の仲間をお迎えし、4名での開催となりました。

 

また新たな試みとして、レジュメ制度を導入してみました。

今回は選書者である海旧母が、各章、各節ごとにキーワードとなる単語や内容をリストアップし、そのレジュメをベースに本の内容を紹介する、というものです。

これは、読書が苦手で読了を目指したができなかった方、また読んだ内容を他の方が「どう読んだのか」を知りたい方にはとても有益な方法と感じます。

実際、本を読みきれていない方でもその後の話し合い時に参加していただくことができました。

 

今回の課題本は2冊になっています。

そのため、紹介記事も2つに分けてご紹介します。

 

1. 「読書会入門 人が本で交わる場所/ 著 山本 多津也」

 

日本最大級の読書会である猫町倶楽部さんを主催されている山本多津也さんの本になります。当読書会の主催である海旧母も何度も参加しており、尊敬している主催者さんということです。

 読書会に参加するということは、どういう効果を得られるのか?

 読書会に興味がある、けれども参加するのはまだ勇気がいる....

そういった方に、読書会というものはどういうものなのか、ということを、

ご自身が猫町倶楽部を開始するきっかけから具体的にお書きいただいております。

 

実際、こちらの本を何度も読んでから猫町倶楽部に参加される方がいらっしゃるそうです。

その後の話し合いでは、こちらの本を読んだ上で「この奥池袋読書会というものをどういう読書会にしていきたいか」という話題が多く上がりました。

以下は、参加者の感想です。

 

たなやん

「この本を読んで、人生の喜びとしての読書であることを思い出しました。

勉強会のイメージを読書会に対して抱いていましたが、イメージが変わりました。」

 

かくちゃん

「人間の生活は、刑務所のように囲まれていると思う。そのため、無理矢理にでも、

全然違う人達とのコミュニティに入るのはいいことだと思う。

ただ、遊べる読書会は、もう読書会じゃないのでは?と感じた。」

 

ぜひ、読書会に行ってみたい、という方はこちらの本をお手にとってみてください。

 

 

第一回 課題本「82年生まれ、キム・ジヨン/チョ・ナムジュ」

開催日: 2019年11月16日(土)

参加人数: 2名

課題本: 「82年生まれ、キム・ジヨン」 チョ・ナムジュ著 

 

記念すべき第一回の奥池袋読書会は、主催の海旧母が数々の読書会に参加してきた中で

読書会の和やかな雰囲気を壊してしまう可能性が高いと感じている一冊を課題本として開催されました。

今回の参加者は海旧母とやっかの2名であったこともあり、男性視点女性視点の双方から当課題本読了後の感想や感じたことを発表しました。

 

以下、参加者の感想です。

 

海旧母

「都内で開催される幾つかの読書会において、その主たる参加者属性に類似性があるという印象を抱いていた。

都内で開催される幾つかの読書会において、その主たる参加者属性に類似性があるという印象を抱いていた。

具体的には、正社員・正規職員で20代~30代の独身者というものだ(狭い経験上のものだし、当然、例外もあることでしょう)。もちろん、これは何ら問題のあることではない。あくまでも自由参加の世界なのだから。

ただ、そうは言うものの、生活環境によってはハードルの高い自由参加と言えるかもしれない。例えば、幼児を抱えた夫婦などを思い浮かべて欲しい。

そこで、もっと多様性というものに配慮した読書会があっても良いのではと考えるようになっていった。そういった問題意識のもとで、本書を課題本に選んだのだ。痛烈な批判を言われてしまうことも覚悟してのことだけれど。

ここで私は「痛烈な批判を言われてしまう」立場にあることを認めざるを得ない。フェミニズムに理解を示し、「私は貴女達の側ですよ」などと言える立場にはない。

そして、ただ黙って耳を傾け、可能な限り改めようと努めることしかできない。ただ、それでも、多少なりとも良い方向へ変化していく可能性を信じたいし、読書はその機会を提供してくれることがあるとも考えている。

なお、多様性に配慮した読書会を実現するには、解決しなければならないハードルがいくつもある。少人数のサークルでは、すぐに実現させることは難しい。それでも諦めずに、少しずつ歩みを進めていくつもりである。もし賛同して下さる方がいらっしゃるのであれば、是非、お力を貸して欲しい。最後に、本書は「視点移動」が絶妙。読み手を作品世界に引き込む力がかなり強いということも、併せて付言しておきたい。」

 

やっか

「読み進めていくうちに、自分が過去に経験してきた女性差別についてを思い出し、

胸が痛くなるとともに、どうやったらそういうことを経験しない世の中になるのだろうかと考えていました。

ダイバーシティというのは、実現するのが本当に大変です。

まずは、ダイバーシティという考え方を忘れずに生活をしていくことから始めたいと思います」

 

韓国では映画化も決定している衝撃作、ぜひ一度お手にとってみてください。 

メンバー紹介

奥池袋読書会は、20代〜60代の幅広い年齢層の方にご参加いただいております。
それぞれのバックグラウンドやライフスタイルは違うため、多様な意見を聞くことができます。お子さんがいらっしゃり、他の読書会はなかなか参加できない方や、Non-Japanese speakerの方にもご参加いただける読書会を目指している運営メンバーをご紹介します。
 
 
主催: 海の旧字体は母(略称:海旧母)
当読書会の発起人。選書・場所探し・メンバー間の連絡係などとりあえずなんでもやるスーパーマンです。そして分科会である「人文書リーディング・テーブル」のサイト運営も行っています。
  
やっか
広報担当。主催の海旧母とは10年前に同じ職場で働いており知り合った縁で当読書会に参加しています。仕事で必要な技術書、ビジネス書、自己啓発系や小説しか読まないため、新たなジャンルに出会いたく読書会参加を決意しました。第二言語の英語を利用し、Non-Japanese speakerの案内も担当します。
 
たなやん
応対・接遇担当。とっても優しく、周りにマイナスイオンを飛ばしてらっしゃいます。初参加の方もリラックスしていただける雰囲気をお持ちの方です。やっか同様、主催海旧母と同じ職場で働いたことがあり(やっかと就労時期は被っていない..残念)、海旧母の声掛けに応じ参加されました。
 
かくちゃん
大学生から大学院生に変貌を遂げた、当読書会の最年少担当です。海旧母が見聞を広めるために参加した別読書会で出会い、参加されました。非常に面白い視点を持っており、頭が柔らかいな〜〜〜と感じる意見をぬるーんと差し込んできます。 

NH
人生経験がとても豊富でらっしゃるため、いつも勉強になるご意見をくださいます。海旧母の勤務先で、お客様として海旧母と出会い、当読書会に興味を持っていただき参加されました。当読書会をより良くするために積極的にご提案もくださる、とても頼りになる方です。
 
 
奥池袋読書会では、多くの方に関わっていただきたいと考えており、サポートメンバーを募集しております。ぜひ、ご興味のある方は、近日公開予定の連絡先にご連絡を宜しくお願いいたします。
 

未読者参加型について

奥池袋読書会は課題本型の読書会です。
開催期日までに課題本を読んできて参加するのが一般的です。
多くの課題本型読書会がこの定型を踏襲しております。
そしてそれはある意味、当然の帰結であり、いたって普通のことです。ただ普通のことではあるのですが、ある種の前提が隠れているとも言えます。
それは参加者が、「読書できる層」に限られてくるという前提です。その隠れた前提があるため、読書会への参加ができ難い層も生じていたと言えます。

では反対に「読書できない層」とは、どのような方々を指すのか。
大きく二つのケースがあると考えております。
一つ目は小さいお子さんなどのいらっしゃる「子育て世代」。
皆さん、口をそろえて言う。「そんな時間すらない」と。「仕事・家事で忙しすぎて、読書なんて夢のまた夢だ」と。

二つ目は海外出身の方々。一部のビジネスパーソンを除くと、「漢字が苦手で日本語の本が読めない」という方々がかなりいらっしゃる。
せっかく日本に滞在しているのに、本人にとっても私たちにとっても非常にもったいない。

このように、なかなか読書すらできにくい方々が大勢いらっしゃる。
一方で、分かっちゃいるが実現そのものへのハードルが高いということもあり、
今までそういった層へ読書会の方から参加を促せなかった。
つまり見方を変えれば、読書会への参加をアピールできる層は、まだまだ拡大の余地があるとも言い換えることができます。
では、「子育て世代」や「海外出身の方々」へも参加を訴求するにはどうしたらよいか。
そこで出した一つの方向性が、「未読でも参加できる形態の読書会」というものでした。


ここで皆さんは、次のような疑問を感じていることでしょう。
本当に未読でも大丈夫なのか。
参加しても何も発言できないのではないかと。
結論から先に言えば、多少のハードルはあるでしょうが、乗り越えられないことはないと考えております。

そもそも一口に「読んだ」といっても、そこにはいろいろな程度がグラデーションのように存在しています。
例えば、読んだけど理解がイマイチ。
他の本の内容が混ざってきたり、読んだことすら忘れてしまった場合などなどです。

つまり、「読んだ」と「読んでいない」との境界は曖昧であり、その差は意外と小さいのではないかと。
むしろ、課題本をテーマに語り合うという点からみれば、未読の方が既読本にとらわれることなく自由に発想を展開できる余地すらあると。

さらに申し上げれば、読書会は対話のための場であり、対話というのはそれぞれの差異から始まるのではないかと。
そして差異から始まるのであれば、未読者というのは、読書会に新しい光を差し込む可能性を持つ存在なのではないでしょうか。

奥行け!セブン

① 皆で助け合う(フォローし合う)読書会を目指す

 

② 初参加者や少数回・久しぶりの参加者へもしっかりとフォローしていく

 

③ メンバーに居心地の良さを感じてもらえるコミュニティを目指す

 

④ 可能な限り、メンバーの関与度合いを高めていきたい

 

⑤ 海外出身者や、小さなお子さんのいる方など、参加者の多様性も図っていく

 

⑥ 気軽に発言できる、対話重視の楽しい読書会を目指す

 

⑦ 新しい試みにチャレンジしながら、人文書の魅力を広めていきたい